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『幽体離脱はお好きですか?』 6

オカルト探偵俱楽部2 

『幽体離脱はお好きですか?』 6





 

「しかし驚いたな」

 ひとしきり海の中ではしゃいで、休憩の為上がって来た洋平と秀樹は声を揃えるように言った。

「千葉があんなにスタイルが良いとは思わなかったよ。」

 これは秀樹の感想。

「目のやり場に困ったな」

 これは洋平の感想。

 確かに美樹のスタイルはかなり良い部類に入るだろう。すれ違う男達だけでなく、女性達も思わず振り向いて、羨望と嫉妬の眼差しを送ってくる。

「中山も割りと胸大きいよな」

「そうか。標準じゃないか?」

 そんな話をしていると、後ろから三人の女性も追いかけるように上がって来た。洋平と秀樹は会話を中断した。

「何の話?私達の事言ってたでしょう」

 麻美が洋平の横に並ぶと、タオルで顔を拭きながら問いかけた。

「別に」

 洋平は素っ気無く答える。

「ねえ。かき氷でも食べない?」

 美樹が誰にというわけでなく言った。

「それいいね。食べようぜ」

 秀樹が目を輝かせて言う。

「俺達が買ってこようか?みんな食べる?」

 洋平は持ってきていたウェストバックから小銭入れを取り出しながら言うと、

「みんなで行きましょ」

 麻美はそう言うと、手に持っていた小さなポシェットからサングラスを取り出して頭の上に被せた。結局全員で近くの海の家まで行くことになり、ぞろぞろと肩を並べて歩き出した。相変わらずの日差しに、海で冷えた身体もすぐに熱くなり、汗が滴り落ちる。

 五分も歩くと海の家に着いた。ビーチに人が大勢いる割には海の家は空いていた。中で大きな声が響いている。数人の男達が何やら騒いでいるようだ。秀樹が入り口からそっと覗き込む。見るからにガラの悪そうな男が三人、イガリ声で喚き立てている。そんなことはお構いなしに、秀樹はおもむろに店内に入ると、

「すみません。かき氷を下さい」

 男達の声に負けずとも劣らない大きな声で奥にいると思われる店の人に声をかけた。

 男達の喚き声がピタリと止まり、敵意剥き出しの人相で何だこいつはと言わんばかりの形相の六つの視線が睨みつけるように秀樹に注がれた。一般客ならば完全に引いて逃げ出してしまうだろう。しかし等の秀樹は全く動じていない。余程の大物か・・・それとも・・・。

 その男達は突然現れた部外者に少しイラついたように、

「何だてめえは、何しに着やがった!」

「何しにって言われてもここは海の家でしょ。別に誰が何しに来てもお宅らには関係ないでしょ」

 秀樹の飄々とした態度に一人の男が立ち上がった。

「てめえ!俺たちをなめてんのか!」

 すご振って身を乗り出す。

「何で?」

 その一言で、目の前の男の頭の血管からぷちっという音が聞こえた。秀樹に詰め寄ると胸ぐらを掴み顔を近づける。そして右手を振り上げ秀樹の顔面に向かって振り下ろされた。その光景を洋平達は随分冷静に見ている。秀樹の素性をよく知らない白河緑を除いては・・・。

 次の瞬間、すごぶっていた男の方が床にひれ伏している。当の本人も何が起こったか解っていないようだ。それを見ていた残りの二人の男達も呆気に取られている。

「こいつに手を出すのは止めた方がいいよ」

 洋平が割って入ってきた。

「日本中探してもこいつより強い奴はそんなにいないと思うよ。まあこいつの親父は別格だけどね。名前位知ってるでしょ、青地幸四郎って人」

 その名前を聞いた途端、男達の顔が青ざめた。彼等はどこかの組織に組していて、手を出してはならない相手を上から聞かされているのだろう。それもそうだ、たった一人で数万人もいるという大組織を潰した男である。名実共に日本最強で、日本の暴力団に限らず、世界のマフィアでさえ手を出せずにいるという伝説の男である。

 秀樹はその息子なのだ。訳あって母親の姓を名乗っているが、子供の頃から父親に叩き込まれた格闘術は幼くして神童と呼ばれるほどだった。幸四郎をもってして、

<こいつはワシより強くなるかも知れんな>

と言わしめた逸材である。

 しかし男達は秀樹のそんな素性を知らない。それに一般人に馬鹿にされっぱなしでは組織にいるものとしてプライドが許さないのだろう。その役に立たないプライドで大きな間違いを犯した。彼らの中で最も大柄な男が椅子から立ち上がり、秀樹の方に近づく。男はポケットに手を入れ、中から小さなナイフを取り出した。

 同時にポケットから車のキーが落ちる。

『カシャ』

 床にキーが落ちる音と同時に、洋平に異変が起きた。

「うっ」

 頭を抱え込むように押さえてその場にうずくまる。その姿を見て麻美の脳裏に半年前の光景が浮かんだ。そう洋平の瞳が・・・。

 あの時と同じように数分いや数秒で洋平は何事も無かったかのように立ち上がった。そしてやはりあの時と同じように両の瞳がやや黒味を帯びた青色、正に紺碧の瞳に変わっていた。正面にいた男達は洋平の突然の変貌に金縛りにあったかのように微動だにしない。

 洋平は男達から右に二、三メートル程離れた場所をじっと見つめている。その場所にはソフトクリームの機械が静かに佇んでいるだけだ。洋平はそこに誰かがいるかのように話しかけた。

「君は誰?」

 周りの人達が一斉に洋平の視線の方向に向いた。そして全員の頭上には『?』マークが飛び交った。

しかし一番驚いたのはその場所にいた慎介だった。今まで誰からも気付かれず、人との接触が皆無だった慎介にとってまさに青天の霹靂だ。

『僕が見えるんですか?』

 恐る恐る掛け声の主に話しかける。

「はっきりとは言えないけど、君の姿形は認識できるよ。肉体と分離して実体の無い状態のようだね」

『分かりますか?事故にあってそれからこんな状態になってしまったんです』

 少し肩を落として、

『何度か自分の身体に戻ろうと試みたんですけど、どうしても戻れなくて』

 洋平は少し考え込むように腕を組むと、

「この場所は思い出の場所なの?」

 話題を変えた。

『はい。これからどうなるのか考えていたとき。昨年友達と来たこの場所の記憶が何気なく脳裏に浮かんで、何となく足が向いてしまって』

「ところで、事故の状況は少しでも覚えてる?」

『いえ、それほど覚えていません。咄嗟の事だったので・・・。五、六才の少年が飛び出して来たことと、黒っぽい車が突っ込んできたという事くらいです』

 洋平と慎介のそんな会話は傍から見れば、洋平の独り言にしか聞こえないだろう。頭がおかしくなったのかと思う者もいるかもしれない。

 洋平は慎介に歩み寄ると、慎介の肩に手をのせるようにかざした。この行動も慎介の姿が見えない者にとっては奇妙に見える。

「洋ちゃん」

 麻美が心配そうに声をかけた。

 洋平は何も答えず、麻美の方に振り向く。

「・・・また瞳が・・・」

 その言葉に秀樹と美樹、そして緑は洋平の瞳を覗き込む。そして三人共同様に息を呑んだ。麻美は二度目だか、残りの三人は初めてなので、洋平のその瞳に戸惑いが隠せないようだ。

 洋平はそんな彼等を、無視するように再び慎介の方に振り返る。

「てめえ!何ごちゃごちゃ言ってんだ!」

突然男の一人が、不意を突くように洋平に向かって突進してきた。洋平に掴みかかろうとしたその瞬間、その男も急に重力がなく無くなったかの様に身体が“ふわり”と浮き、気が付いたときには地面に這いつくばっていた。そして洋平の横には何事も無かったかのように秀樹が立っている。

 洋平は地面にうつ伏せに倒れている男を横目でチラッと見て、残りの二人の男の方に視線を移すと、

「貴方達ですね、この少年を車で撥ねたのは」

「?」

 再びその場にいた全員の頭上に「?」マークが浮かんだ。

 洋平に何故そんなことが分かるのかというと、覚醒した洋平には特殊な力が宿ってくる。そしてその一つの力として、サイコメトリーというものがある。要は残留思念を読み取って、本人さえ覚えていない出来事を読み取る力だ。

 慎介に事故の質問をした時、彼はその時の情景を思い出そうとしていた。そして彼に接触した時、その思考を洋平が読み取るというより、慎介の覚えていない出来事を、その場の状況が復元されたかのように動画として洋平の脳裏に入り込んでくるのだ。その画像の中に、この三人の姿がくっきりと映し出されていた。

 洋平は先程に脳裏に映しだされた事を、事細かに話し始めた。ボールを追いかけて急に子供が飛び出して来た事。少年を助けるために駆け寄った慎介が車の運転手と一瞬視線が合った事。そして天と地を交互に見ながら街路樹にぶつかった事。

洋平が話を進めていくうち、まるでその場に居て一部終始を見ていたかのような説明に男達の顔が段々青ざめてきた。




7へ続く


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『幽体離脱はお好きですか?』 5

オカルト探偵俱楽部2 

『幽体離脱はお好きですか?』






 風間慎介は海水浴場を歩いていた。というより一般の人達と同じ高さの視線で移動していたというべきか。その姿を見ることが出来たなら何の違和感も無いだろう。しかしその姿は誰の目にも留まることは無かった。
 なぜ慎介がここにいるかというと。あれから色々と考えてみたが納得にいく解答が得られず、そうしているうちに昨年友達と来た海に自然と足が向いていったのだ。慎介にとって一番新しい最も記憶に残っている出来事だった。
 昨年友達と来た海は何も変わっておらず、大勢の人達が各々で楽しんでいる。慎介はそんな人達を横目に、昨年盛り上がった海の家に足を運んだ。
 海の家は案外空いていた。というのもガラの悪そうな数人の男達が大きな態度で大声を出している。これでは一般のお客は近づき難い。
 慎介はその男達に近づいた。二~三メートル程の距離まで近づいても、男達は案の定慎介に気が付かない。やはり一般の人には慎介の姿を見ることができないのは事実のようだ。
 男達は店に文句をつけているようだ。注文したものと違うものがきたから代金を払わないというような事を言って、大の大人が情けないほど子供っぽいことで因縁をつけている。その割には出されたものは奇麗に完食されていた。ようは代金を払いたくないという事の口実に過ぎないのであろう。店の人は怯えて表に出てこない。
その下らない内容を聞いた慎介は、姿が見えないという事を良い事に、脳裏にチョッとした悪戯心が芽生えた。
一人の男の後ろに立ち、その後ろ頭をある芸人の突っ込みのように平手で叩いた・・・。いや叩いたつもりだった。しかしその手は何の手応えもなく、慎介から見ると、相手の方が透けているようにスーッと通り抜ける。
多少予想していた事とはいえ、慎介は苦笑をかくせない。自分の置かれた状況を再確認するには十分な出来事だった。
肩を落としてその場から離れようとした時、五人の男女がやって来た。この雰囲気に動じない人もいるのだろう。彼等は店の人を確認できなかったのか、
「すみません。かき氷下さい」
 一人の男が大きな声で声をかけた。


6へ続く


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