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「嗤う鬼火」 6

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   今までに書いたイラストや小説の保管場所。最近読んだ本で、個人的に面白いと思ったものを紹介しています。


「まず一つ目は、本当にたまたま居合わせた。二つ目は俺達が人恋坂に行くということを知っていた誰かが先回りして工作した。そしてもう一つ考えられるのが・・・俺達の中に犯人がいるかだ」

 倉橋君は言ってはならないような事を言っているような気がする。でもそうは思いたくは無いけど一つの選択肢として可能性的にはあり得る。

「消去法で考えてみよう。まず最初の偶然居合わせたというのは、確率的にも低いと思うし、鬼火の出現したタイミングに必然性を感じるので、ほぼ無いと思う」

 私も横で頷く。確率は低くても偶然のいうのはあり得るが、あの絶妙のタイミングでの鬼火出現は意図的な何かが感じられる。

「まあ絶対無いとはいえないけどな!・・・二つ目の俺達が人恋坂に行くのを知っていた誰かが先回りしてというのも行動理由が今一はっきりしないし何のために俺達に鬼火を見させたのかという理由も分らない。ただ驚かせようと思ってやったとしても手が込みすぎている」

 その意見についても十分納得できた。

「そして最後の俺達の中にということになると・・・」

 倉橋君はここで言葉を切った。少し言いにくいことなのかもしれない。

「まあ、もしこの意見が正解なら自ずと犯人は分ってくる」

 表情を一つも変えずにそう言いきる倉橋君はニヒルでクールでかっこいいけど少し怖く感じられた。

「それなりの知識があって、あの場所に行くのを知っていて、かつこんな細工が出来るのは・・・この中では・・・」

 私はしばらく呼吸を止めてその先の言葉を待った。他の二人も同じような表情で見守っている。

「中馬!お前だよ」

 倉橋君は中馬君の方に向かって言った。私と美歩も釣られるように中馬君の方に向く。

「・・・・・」

 中馬君は何も答えない。

「まさか賢君が・・・?」

 美歩も呆然としている。

「あの時の状況から考えて、あのタイミングで鬼火を出現させる事が出来るのは中馬しかいないんだよ。それにお前化学好きだったよな?」

 みんな静まりかえって中馬君を凝視している。中馬君も倉橋君から視線を離さず男二人の睨み合いがしばらく続いたけど、中馬君が不意に視線を外し少し笑い顔で答えた。

「巧巳の言うとおり鬼火を作ったのは俺だよ。ある雑誌で鬼火の作り方を見たとき、『嗤う鬼火』の事を思い出して、みんなをびっくりさせようと思ってしたんだよ」

中馬君が白状した。

「冷静に考えてみると、あの人恋坂に行こうと言い出したのはお前だし、日にちや集合時間を指定したのもお前、そして先頭を歩いて目的地まで先導したのもお前だったよな。あの時随分時間を気にしていたみたいだから、微妙な時間調整をしてたんだろう?」

 倉橋君が淡々と答える。

「鬼火の細工は前日に翌日の午後十一時くらいに発火するように仕掛けて置いたんだろう。市販のオンオフタイマーでも使ってな。最近の市販のタイマーは安くて高機能のものもあるからな」

中間君はちょっとした悪戯心でみんなを驚かそうと思ったらしいのだが、倉橋君の説明を聞きよくよく考えてみると私の稚拙な脳味噌でも細かい部分まで十分理解できる。美歩も少し呆れ顔で中馬君のことを見ていた。

(でもあの女の幽霊は・・・!それと私の肩を叩いただれかの事と倉橋君が言っていた白い球体、そして昨夜の夢であって夢でないような奇妙な体験は?)

 鬼火については理解できた。でもその他の現象についてはまだ分からないことばかりだ。

 私が漠然とそんなことを考えていると、私の心を読み取ったかのように、

「でも俺がしたのは一つの鬼火だけで、もう一つの鬼火とあの女性の霊のことは知らないぞ」

 中馬君は一部を認めたものの、他の出来事については否定した。ということは一つは本物の鬼火って事?

「ということは、一つは本物の鬼火って事か!」

 倉橋君も同じ事を考えていたようで、それを声に出して言い少し考え込むような仕草を取った。左手の人差し指で鼻の頭をゆっくりと擦るようにして何かに集中している。

 これって倉橋君が何か複雑な思考をするときの癖なのかな?でも名探偵ぽくって格好いい!

 頭の中でいつもの妄想に耽っていると、

「ところで倉橋!その右手どうしたんだ?」

 中馬君が自分のしたことを見抜かれてバツが悪くて話題を変えようと思ったのか、それとも今頃気付いたのか、右の手首に付けていたリストバンドを見ていった。

「あっ、これ?」

 私は右手を差し出すようにみんなの目に置くと、どう説明しようか迷いながら、昨夜の夢のことと、朝起きたら夢で掴まれた所と同じ箇所に痣のようなものがあったことを、出来るだけ詳細に話した。そしてリストバンドを外しみんなにその痣を見せた。

「何かすごいことのなってるな!これって痣?」

「多分そうだと思うけど、倉橋君はどう思う?」

 私は倉橋君の前に腕を差し出した。倉橋君は先程の思考から我に返ると、しばらくその痣を見ていたが、何かを感じたのか私の腕を掴んだ。

 ドキ! 血圧が少し上昇。

 私の手首を大切なものを触るかのように丁寧に、そして慎重に扱った。そして力の抜けた私の腕を優しくそっとテーブルの上に置くと、

「これ痣じゃないな!」

「!?」

 鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていたのだろう。倉橋君は優しい笑みを私に向けゆっくりと口を開いた。

「痣が着くということはかなり強い圧力をかけないと着かない。まして手首に着くなんて想像上の痛みを伴うと思うし、この痣の着き方はおかしい」

 そう言うと倉橋君は再び私の腕を取るとその痣の位置に自分の指先を合わせるように掴む。不意に掴まれたこともあってか、再び血圧上昇、さらに脈拍も。

 そんな私の内部行動をよそに倉橋君は、

「この状態から力を入れると・・・」

 手首にちょっとした圧力が掛り痛いという程ではないがそれなりの圧迫感を感じる。

「倉橋痛いか?」

 私は首を横に振った。

「普通痣と言うのは皮膚の色素細胞の異常増殖や、皮膚の内出血によって赤紫色に変色することなんだけど、手首のように細いものを掴まれたときには圧が円状に掛り手首に輪のような痣が出来るんだ。まして手首の細い女性なんかは特にな」

 そう言われてみれば今私は手首全体に圧力を感じている。この力の掛り方だと手首を巻くように痣が出来そうだ。

「だったらこの痣みたいなものは何なんだ?」

 中馬君が結論を求めた。

「はっきりしたことは判らないけど、霊傷じゃないかな?」

「霊傷?」

「凍傷みたいなものかな!」

「凍傷?この真夏に?」

 釈然としないのか、首を傾げながら自分なりに思考を整理しているようだ。でも霊ということをベースに考えるとあり得なくもないような気もする。

「でも何でそんなことがわかるの?」

 いままで黙って私達の話に耳を傾けていた美歩が素朴な疑問を口にした。確かに何で倉橋君にそんなことがわかるんだろう。





 

最初から読む      「嗤う鬼火」7に続く



では後ほど!




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ちょっと中休み(セクシーOL)

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文章を読むことに少し疲れてきたという方のために、セクシーショットを1つ挟みます。

次回から小説「嗤う鬼火」の続きをUPしますので、また読みに来て下さい。

では後ほど!





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「嗤う鬼火」 5

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第二章 「解析」

 

 

 約束の時間の一〇分前には何とか喫茶アルテイシアに着いた。外観はいつも見ているが、近くでまじまじ見るとやはり独特の雰囲気を感じる。道沿いに面している壁には小さな丸い窓が二つ程あるだけで、その窓の間に大きく両開きの扉が存在感を出している。その扉の上に小さく『喫茶アルテイシア』と書かれたモニュメントがありこれがなければ何の店か判らないだろう。

 私は始めて入る店に少し緊張しながら取手に手を掛けるとゆっくりと開けた。予想はしていたとはいえ店内は別世界に迷い込んだような感覚を私に与えその場に立ち尽くしてしまった。

「おーい!」

 奥の方から聞き覚えのある声が・・・というか昨日も聞いていた声が聞こえた。私達に気付いた中馬君が手を挙げている。一番奥の席に倉橋君と向かい合わせに座っていた。

 私達はそのテーブルまで行くと、空いている席に座る。当然のように美歩は中馬君の隣に座ると、必然的に私は倉橋君の横に座ることになる。・・・少し緊張・・・

「いらっしゃいませ!」

 若い女性の声が近くで聞こえた。私は声のする方に振り返ると、

「!」

 何処かで見たことのある顔・・・、そうだ二年の倉橋佐緒里さんだ。この学校にこの地域では珍しい倉橋性が三人いてその一人が彼女だ。三人もいれば珍しくないような気もするけど・・・。

「ご注文は?」

 佐緒里さんが慣れた声色で注文を取る。

「俺はコーヒー。お前らは?」

「私はレモンティー!」

 私も美歩と同じレモンティーにした。

「コーヒーとレモンティーね。巧巳はいつものでいいよね」

 横の倉橋君が小さく頷く。・・・・・って、な、何で呼び捨て?それも下の名前で。私は倉橋君の方に向き、その整った横顔を見つめながら、

「倉橋君ってお姉さんいたっけ?」

 取りあえず聞いてみる。

「いいや」

 相変わらず言葉が短い、短すぎるぞ!これでは会話にならないじゃないの。

「佐緒里さんは一応巧巳の従姉にあたるんだよ」

 中馬君が注釈を入れてくれた。

「一応?」

「従姉っていっても、ここのマスターは巧巳の叔父にあたるんだけど、佐緒里さんはマスターの再婚した奥さんの連れ子だから形式上は従姉だけど、血縁上は他人なんだ。だから一応」

 このアンティークな喫茶店が倉橋君と関係があったなんて、しかも佐緒里さんとの関係も複雑だ。恋愛に発展しないとも限らない。

 学校でも倉橋君には隠れファンのような輩が結構いる。でもいつもの無愛想さで誰も声を掛けられずにいるのが現状だ。そんな中、私は中馬君と美歩のおかげで少し近い位置にいて他より一歩リードしていると思う。

佐緒里さんが倉橋君のことをどう思っているかにもよるけど、強敵が現れた。

「まあ、そんなことはどうでも良いことだから置いといて、例の事件のことで巧巳が何か気付いた事があるらしいんだ」

私にはどうでも良くない!それに昨夜の出来事が事件になっている。少し大袈裟じゃない?

「気付いた事って何?」

 美歩が興味深そうに身を乗り出して訪ねた。

「昨日の鬼火だけど、あれは作り物だ!」

 倉橋君がまたまた大胆な発言。

「鬼火って作れるの?」

 これは私の素朴な意見。

「割と簡単に作れるさ、材料も大した物はいらないし手間もそれ程かからない。作り方は・・・。」

 倉橋君が言うには、綿の布と糸(毛糸のようなものがベストらしい)があれば本当に簡単にできるそうだ。まず綿の布を適当な大きさ三~五センチ四方位に切って、それをボール状に丸め、その上から糸をぐるぐると巻き付けて綺麗な球状にする。それにライターオイルを染み込ませて火を着けると鬼火のような青白い炎に成るのだそうだ。

 その火を細いワイヤーか何かで吊るせば、あたかも浮遊しているように見せることが出来、鬼火というのは基本的に夜に出現する物なので、ワイヤーなどは目に見えることはないらしい。

「確かにあの場所は鬱蒼としているから、そういう細工はやりやすいかもな!」

 昨夜のあの場所を思い出してみる。夜にそれも歩いて行ったことがなかったので、今まで何とも思わなかったが、実際に行ってみると夜の人恋坂の頂上は決して気持ちの良いものではない。木々が左右に鬱蒼と茂り、ただ一つの街灯が逆に寂しさを増強しているようにも感じられる。そして問題の墓地もそれに加算する様に雰囲気を醸し出している。

 中馬君の言っていることは確かに当たっているような気がする。

「でも誰が何のためにそんなことを?それにいつどういうタイミングでするの?」

「そんなこと俺が分る訳無いじゃないか!」

「毎日鬼火を作っているわけでもないだろうし、私達はたまたま偶然居合わせたってこと?」

 私と中馬君との会話が途切れて、その場に僅かに静寂が訪れた時、倉橋君が沈黙を破るように言った。

「あの鬼火を作った者の意図は分らないけど。なぜ俺達があの日鬼火を見たかということを推測すると、二つ・・・いや三つ程臆見がある」

 倉橋君以外の残りの三人は次の言葉を固唾を飲むようにして待った。

 

最初から読む      「嗤う鬼火」6に続く



では後ほど!





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「嗤う鬼火」 4

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 私は寝覚めの悪い状態で躰を起こした。

(嫌な夢見たなあ。倉橋君があんなこと言うからこんな変な夢を見てしまうんだ。本当にもう)

 横では美歩が気持ちよさそうにまだ眠っている。何気なく時計を見ると、午前八時を少し回っていた。

「あっ!もうこんな時間。美歩、起きて!」

 まだ布団に入っている美歩を揺さぶるようにして起こす。眠そうに目を擦りながら美歩は躰を起こし、

「おはよう」

「おはよう。早く準備しないと約束の時間に遅れるよ」

 そう言いながらも二人はしばらく布団の上でボーッとしていたが、どちらからともなく立ち上がり、布団をたたんでベッドの上に重ねると、洗面し、服を着替えて外出のための戦闘準備に入った。女子たるものこれに時間を掛けなくてどうする!なんて言ったって今日はあの倉橋君とプライベートで会うのだから念入りにしなくては。でも男の子って割と化粧の匂いを嫌う人もいるから余り念入りにしても・・・。倉橋君はどうなんだろう?

 そんなことを考えながらも着々と変身は進んでいった。

「ねえ、その腕どうしたの?」

 横で別人に化けつつある美歩が私の左手首辺りを見ていった。

「腕?」

 その場所を見て、

「!?」

 左手首の内側に五つの斑紋のような痣があった。何だろう?私には身に覚えがな・・・いやあった。

「美歩右手で私の手首掴んでみて!」

 美歩は怪訝そうにしながらも言われた通りに右手で私の左手首を掴んだ。

(やっぱり!)

 美歩の指先と、痣の位置が見事なまでに一致した。

(昨夜のあれは夢じゃない!?)

 あの時の出来事が、ゆっくりとだがはっきりとした画像として甦った。しかし今は昨夜程の恐怖が訪れない。冷静に考えてみるとあの女性の悲しい瞳が何かを訴えているようで、それでもって何かを呟いていた事を思い出し、怖さより好奇心の方が強かったからだろう。

(なんて言ったんだろう?)

「どうしたの?」

 余りにボーッと考え事をしていた私に、美歩が心配そうに顔を覗きながら言った。私は我に返り、

「うん、大丈夫。ちょっと昨夜変な夢を見たから、それとこの痣が関係あるのかなって思って。でも関係ないみたい。そんなB級映画みたいなことが起こるわけないし」

 そう言ってはみたものの、関係があるのは間違いない。どうしよう?みんなで集まったときに相談してみようか?

「よし、準備完了!」

 美歩が小さくガッツポーズを取るように言った。そんなに気合いが入ってたの!それにしても見事なまでの変貌ぶり、世の男はこれに騙されるのか!そんなことに感心してる場合じゃない私も早く変身しなくては・・・・・変・身・トオー。

 



 

最初から読む      「嗤う鬼火」5に続く



では後ほど!





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「嗤う鬼火」 3

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 あの後直ぐに解散し各々帰宅したけど、家に帰っても倉橋君からの伝言が頭から離れない。

(青白い球体が私にぶつかった?)

 それだけでも嫌な感じがするのに、一人にならない方がいいなんて不吉そのものの言葉。考えただけで躰がぶるっと震えてしまう。決して武者震いなんかではないのは確か。

 美歩が泊まってくれるというので、多少は気分がまぎれているが、何かの拍子にふと思い出すと、やっぱりぶるっ!

 そんなことを考えながらも私は六畳程の部屋に我が物顔に置かれているシングルベットと申し訳なさそうに佇む小さな机の間に所狭しと無理矢理二組の布団を敷いていた。黙々と作業をしている私の横で、美歩が机の上にあるノートパソコンでインターネットを閲覧している。

「あった!」

 その言葉に私は何かに釣られるように美歩の方に向いた。

「嗤う鬼火ってネットにも載ってるよ。有名なんだ!」

 一通り布団を敷き終えると、美歩の隣に行きディスプレイを覗き込む。

<君は流行り神を見たか!?>

 という見出しで、全国の都市伝説を紹介しているサイトのようだ。

「ねえ、どんな内容のことを書いてるの?」

「ちょっと待ってね」

 美歩はそこに書かれている文章を初め声を出して読んでいたが、途中から黙読し始めた。美歩の読んでいる文章の横に、私もよく知っている人恋坂とあの墓地の写真が掲載されている。

「私達が知ってる内容とそれ程変わらないみたい。でもこれには嗤い声が聞こえるって書いてあるけど、女の人の幽霊が出るなんて書いてないよ」

「私達、嗤い声なんか聞いてないよね」

「そうだね。私がお墓の方に目を向けたときには、あの女の人はもうそこにいたような気がするけど・・・」

 そう言い終わった後に、美歩は躰を小さく震わせた。その時の事を思い出したのだろう。あの暗闇の中、あの場所で、あのシュチエーションは本当に怖い。と言うより怖かった。

「もうこの話止めようよ」

 私は話題を変えようと、

「ところで。美歩と中馬君付き合ってるの?」

 ストレートな質問。

「えっ・・・うん・・・まあ・・・」

歯切れが悪い。やっぱりそうなんだ。何となく良い関係に見えたもんね。

「そんなことより、志緒ちゃんは倉橋君のことどうなの?」

 今度は私がうろたえる番?

「どうなのって言われても・・・」

 間の悪い空気が・・・。その時美歩の携帯が鳴った。良かった。助かった!

 美歩は携帯を取り、私に背を向けて話している。僅かに聞こえる話の内容から、相手は中馬君のようだ。話を終えた美歩は携帯を閉じながら私の方に向き直った。

「中馬君から?」

 私は冷やかし混じりに聞くと、

「そうだけど・・・」

美歩は少し恥ずかしそうな表情をしていた。

「明日、アルテイシアに集まらないかって」

「アルテイシアって学校の近くにあるあのアンティークな雰囲気の喫茶店?」

「そう。あそこに十時に集合しないかって。ていうより強制集合みたいだったけど・・・。倉橋君も来るって」

 少し意地の悪そうな顔。私は時計を見た。すでに午前三時。やばい起きられるだろうか?私も一応女の子だから、お化粧とか準備とか色々と時間が掛かる。せめて八時には起きないと。

「そろそろ寝ようか」

布団に入って一時間。午前四時。私は中々寝付けなかった。横では美歩がすやすやと寝息を立てている。何度も寝返りを打ち、何とか眠れそうな感じになったとき、私の中で何かが脈打った。

(何!)

 動悸が速くなり息苦しさを感じる。手を胸の上に上げようと思ったが、その手が全く動こうとしない。

(金縛り!私どうしたの?)

 そうしているうちに急に下腹部が熱くなってきた。でも躰が自分の意志で動かない今の状態ではどうすることも出来ない。

(どうすればいい?美歩!美歩!)

 私は声にならない叫びを横で眠っている美歩に投げかけたが、美歩は何事もないように静かに眠っている。

頭がパニックになりかけたとき、下腹部の熱が少しずつ下がっていくのを感じた。それと同時に、下腹部辺りから青白い球体がふわりと浮き上がってきた。しばらく私の胸辺りでゆらゆらと漂っていたが、その球体が徐々に女性の顔の形に変わっていった。見たことのある女性。そう人恋坂で見た悲しそうな顔をしていたあの女性だ。私は恐怖の余り目を瞑ろうとしたがそれさえままならない。私は一体どうなってしまうの?

 その女性は少しずつ近づき、私の腕を掴むと何かを呟くように唇を動かした。私には読心術の心得がないから何を言っているのか全く解らない。それどころではない状態なのだ。

 私は気を失ったのか、眠ったのか判らないがそれから後の記憶はなかった。


 

最初から読む       「嗤う鬼火」4に続く



では後ほど!





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「嗤う鬼火」 2

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 夜の人恋坂は人気もなく寂しい雰囲気が漂っている。今午後十一時、私達四人は恐る恐るゆっくりとした歩みで坂の頂上に向かって歩いていた。先頭を歩いているのは中馬君、その後ろに美歩ちゃん、そして私、最後に倉橋君が少し間を開け、相変わらずの無表情で付いてきている。この状況の場合最前列か最後列が一番怖い。最近の草食系男子が多い中、彼等はちゃんと男としての気遣いを分かっている貴重な肉食系男子なのかもしれない。

 先頭の中馬君が歩く速度をゆるめた。この暗闇の中、懐中電灯一つで動いていると、前の人の行動一つ一つに敏感に反応してしまう。しばらくゆっくりとしたペースで歩いていたけど、頂上にある唯一の街灯の元に着くと少しばかり緊張感が和らいだ。小さい明かりながらも四人の姿を一度に確認できると気持ちも落ち着く。

「しかし暗くて気持ち悪い場所だな!」

 静寂の中、中馬君がトーンを落とした声で言った。街灯の明かりが返って周りの闇を増幅しているようにも感じられた。そんな中中馬君は懐中電灯で目の前にある墓地を不作法にも照らしながら。

「あそこにある墓地が例の場所で、この道沿いからでも鬼火は見えるってことだけど、出てくるかな?・・・もう少し先に行ってみようか?」

 私達の了解も得ないまま中馬君は再び歩き始めた。仕方なく私達も後に続く、こんなところに置いてけぼりにされてはかなわない。後ろの倉橋君は居るのか居ないのか分からないくらい静かで、違う意味で怖いような気がする。私は背中に何となく悪寒を感じ、ゆっくりと振り返った。そこには顔を横に向け何かに焦点を合わせるように集中している倉橋君の姿が。

 その精悍な顔つきに思わず見とれてしまった。やばい!やばい!今はそんな状況じゃなかった。私は我に返ると彼の見つめている方向に視線を向ける。

「?!」

 腰が抜けるかと思った。

「あ・・・あ・・・あ・・・」

 声にならない。私の異変に気付いたのか中馬君と美歩が私の方を向き、今度は二人が私の視線の先を見て私と同じように硬直した。

「あっ!」

「えっ!」

 各々気持ちいい程よく似た反応をし、ギリシャ神話のその瞳を見ただけで石に変えてしまうと言う魔神メデューサを見てしまったような感覚とでも言うのか、同じような姿勢で同じような顔をして微動だにしない。

 私達四人の視線の先にはゆらゆらと青白く発光した浮遊物があった。

 その時誰かが不意に私の肩を叩いた。私はそれに反応するように振り向こうとしたが、ん!思いとどまる。確か私達は縦一列で歩いていた。今見えている現象はほぼ真横で起こっているので今は横一線になっているはず。・・・・・ということは・・・・・。

 まず左右を確かめてみる。右に美歩、その向こうに中馬君。左には倉橋君が確かにいる。背後に誰かがいるということは絶対にありえない。・・・・・全身に鳥肌が立ってきた。今までに感じたことのない凹凸の凸の部分が身体全体にざわざわと覆っていくのが感じられる。

 私は恐怖のあまり左横にいた倉橋君の腕を強く掴んだ。その行為に倉橋君が私の方に向く。相変わらずの無表情で、何を考えているのか分からない雰囲気はそのままだが、今の私には倉橋君がこっちを向いてくれているという事と誰かに触れているというだけですごく心強く感じられた。

 でも何となく背後に何かいるような気配を感じる。一度そう思ってしまうと後ろが気になってしまい落ち着かない。私は恐怖の中、それに打ち勝つように自分自身に気合いを入れゆっくりと振り返った。しかしそこには何もない。漆黒の闇と、静寂のみが存在するだけだった。

 気のせい!?

 大きく安堵の息をつき向き直る。そのとき倉橋君と目が合ってしまった。傍から見れば情緒不安定ともとれる行動を倉橋君に見られたと思うと、全身の血液が頭に集結してきたかのようにポーッとして顔が赤くなっていくのが自分でも解った。

 でも倉橋君は何も言わず顔を正面に向ける。相変わらず無愛想。私も同じように前に向き直った。

「あっ!」

 目の前の鬼火が二つに増えている。中馬君も美歩も食い入るようにそれを見ていて、先程とポーズすら変わっていない。本当に石になってしまったのだろうか?

私はまたしても背後から悪寒を感じもう一度振り返る。当たり前だが誰もいないし何もない。

 不意に倉橋君が動いた。私はまだ彼の腕を掴んでいたのでその動きに敏感に反応し手を離す。倉橋君は微妙な距離で私の後ろに立った。後ろから倉橋君の息遣いと放射体温が感じられる。今の私の行動から背後を気にしていると感じたのかさり気なくしてくれるその優しい心遣いに感激!本当に好きになってしまいそうだ。

 倉橋君が後ろにいると思うだけで、私の恐怖はあっという間に守られているという安らぎに変わっていった。

「キャーッ」

 突然の悲鳴!発したのは私の隣にいる美歩だった。美歩の方に向こうとしたとき、私もその悲鳴の原因を見てしまった。正面に見える一つの墓石の前にこちらを向いて立っている一人の女性の姿が。今までこの場所には私達四人の他には誰もいなかったはず。

 その女性は何かを羨むような悲しい目をして立っていた。実体がはっきりしていなくて、何となく向こう側の墓石が透けて見える。

(も、もしかして幽霊!?)

 その女性はしばらくその場に佇んでいたが、少し俯き加減になるとその実体も少しずつ薄くなっていき、完全にその場から消失した。

「み、見た?」

 美歩がそう言うか言わないかのうちに、ゆっくりと後退していき、私達は逃げるようにその場から離れ、学校まで一目散に走った。逃げるのに精一杯で周りのことを気にする余裕など無かったが、学校の正門まで来ると、

「あれっ、倉橋君は?」

 少し落ち着きを取りもでした私は、倉橋君が居ないことに気付き肩で息をしながら二人に問いかけた。二人も周りを見渡して、

「本当だ!どこ行ったんだろう?」

 美歩が少し心配そうに言ったが、中馬君は慌てる風もなく、

「まあ、あいつのことだから大丈夫だろ」

どこがどう大丈夫なのか解らなかったが、私もまだ頭が少々パニックになっていたのでそれ以上のことを考えることが出来なかった。

 その時中馬君の携帯が鳴った。

「おっ!噂の巧己からだ。もしもし・・・・・ああ・・・・・それで・・・・・で、今どこにいるんだ・・・・・分った伝えとく。それじゃあ俺たちは先に帰るからな・・・・・了解」

 話の内容はさっぱり解らなかったが倉橋君に何事もなさそうなことは判った。中馬君は電話を切ると私に向かって、

「巧己のやつまだ人恋坂にいるらしんだけど。倉橋に伝言だとよ」

「えっ!まだあそこにいるの!」

 これは美歩の言葉。あの倉橋君が私に伝言って・・・!少し嬉しいような、でも何となく不吉な予感もする。あんな所に深夜一人でいるということ自体私には考えられない、それに、

「伝言って何?」

 多少の不安を抱えたまま聞いた。

「逃げているとき青白い球体が倉橋の方に向かっていってぶつかった様に見えたから大丈夫かって」

 不安的中。でも私はそんな衝撃を感じた記憶は無いけど・・・。

「何ともないけど」

「それと・・・」

 まだ何かあるのだろうか。少し言いにくそうな雰囲気に嫌な不安がまた少し膨らんだ。

「今日寝るときに十分注意して、出来れば一人で寝ない方がいいって」

 中馬君から伝えられた伝言に不安と書かれた風船が極限まで膨れあがり破裂直前にまで膨張している。しかしその膨れあがった不安をどうすることも出来ないままボーッとしていると、

「まあ、余り気にしない方がいいと思うぜ。あいつ昔から意味深な言い方をするところがあるから」

 あの中馬君が気を遣ってくれている。

「明日は日曜だし、私志緒ちゃんの家に泊まろうか?」

 美歩も気に掛けてくれている。ひょっとして私、友達に恵まれてる?こんな状況だけに涙が出そうになる。

 結局美歩ちゃんが私の家に泊まってくれることになった。その夜に何も起こらないに超したことはないが何だかよからぬ事が起こりそうな気配・・・・・嫌だな。

 

 

 

 

最初から読む       「嗤う鬼火」3に続く



では後ほど!




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