学校からの帰り道二人は居心地の悪そうな雰囲気の中肩を並べて歩いていた。あれから色々と話を聞いたが重苦しい内容の話しか聞くことができず二人とも気分的に参ってしまったようだ。
その雰囲気を打破するように真理恵が重い口を開いた。
「何かつらい話だったよね。特に三村さんなんか今も寝たきりなんでしょ。救われないよね」
「そうだな」
圭介が続きを話そうとしたときポケットの中の電話が鳴った。電話を取り出し、
「はい、中山です」
しばらく相手からの言葉を聞き、うん、うんと相槌を打っていたが、
「わかった、今からそっちに行く」
そう言って電話を切ると、
「また早川君に怪現象が起こったらしい。今から行くけど真理恵も一緒に来るかい」
真理恵は小さく頷き、二人は歩く速度を速め先を急いだ。
美穂は一階のリビングで自分を抱きしめりように両手を肩に回し小さくなしながらソファーに座っていた。両親は昨日から親戚の家に出かけている。今誰もいない閑散とした部屋の中で心細い時間を過ごしていた。
昨夜は背筋が凍るような体験をし、気を失った美穂は、部屋のドア下で気を失っていた状態のまま朝六時頃意識を取り戻した。そのまま部屋にいることもできず、直ぐにリビングに下りて照明を点けた。外は既に明るくなっていたが、少しの暗さもその時の美穂には耐え難いものだったようだ。
直ぐに圭介に連絡しようと思ったが、こんなに早くから電話をするものどうかと考え直し、取り敢えずテレビを点ける。画面に映るいつもの見慣れたキャスターの顔を見ると少し落ち着いてきた。
しばらくボーっとしながら見ていたが、気分が良くなってきたのでキッチンに向かいコーヒーを入れた。再びソファーに座ると温かいコーヒーを一口啜る。体内に流れ込むカフェインが美穂の頭をすっきりさせた。少し冷静さを取り戻したことを確認認識すると株掛け時計の方を見る。午前七時一時間近くボーっとしていたようだ。
テレビは芸能界のどうでもいいような出来事を淡々と放送している。美穂はスマートフォンが二階の自分の部屋にあるのを思い出し、余り行きたくなかったが意を決して取りに行く事にした。階段を上がり自分の部屋の前まで来ると、一呼吸おいてゆっくりとドアを開ける。いつもの景色が目に入り、何も変わり映えがしない部屋に安堵しながら中に入った。机の上に置いてあったスマートフォンを手に取ると、机の下の落ちている一枚の紙に目が止まった。昨日圭介から貰った魔除けだ。昨夜はこれのおかげで助かったのだと思いそれを拾った。そのまま部屋を出てリビングに下りる。
ソファーに座りもう一度時計を確認したが、まだ時間的に圭介に連絡とするのは早いようだ。テレビに視線を戻し、そのままソファーに横になる。体が気怠さを訴えるように脳に指令を送っている。数分その姿勢でテレビを見ていたが、気を取り直し起き上がると頭と躰をすっきりさせるためにシャワーを浴びることにした。
衣服を脱ぎバスルームに入ると少し熱めのお湯に設定し頭からそれを被った。躰を流れる熱いお湯に身を任せるとすっきりとしてくる。その間に湯船にお湯を溜めた。
たっぷり二時間近くお風呂に入っていたようだ。髪を乾かし服を着た時には既に九時を少し回っていた。ソファーのローテーブルの上に置いてあったスマートフォンを手に取ると圭介に連絡を入れた
第二章 「怪現象が起こりました」