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『真夜中の電話にはご注意を!』 1



オカルト探偵倶楽部表紙1


『真夜中の電話にはご注意を!』
 
 
 
 
 
 
洋平は部屋に入ると、玄関脇にある照明スイッチを入れた。「パチッ」という音と共に乳白色の明かりが一瞬にして闇を光に変える。正面に見える掛け時計が午後九時を示していた。
「ふうっ」
大きな溜息を吐くと、肩から鞄を下ろし机の上に置く。
 洋平の部屋は一般的なワンルームで六畳程度の部屋と、小さな台所、そしてワンルームには珍しく風呂とトイレが分かれている。几帳面な性格なのか部屋は綺麗に片付いていた。
 冷蔵庫を開けペットボトルのお茶を取り出すと、グラスに注ぎ一気に飲み干す。
『ピリリリッ・・・。ピリリリッ・・・』
 ポケットの中の携帯電話が今の若者には珍しくベル音を鳴らした。洋平はグラスをテーブルに置くと、気だるそうに電話を取り出し、ディスプレイを確認する。
《 土井秀樹 》
 今頃何かなと思いながら、
「もしもし」
『もしもし。洋平!今から出でられる?』
 相手の都合も状況も御構い無しに切り出した。
「相変わらず、いきなりだな」
 疲れきった様な声で答える。
『どうしたんだ?何か疲れた様な声をしてるぞ』
「声の通り疲れてるんだよ。今日のバイト精神的にハードだったんだ」
『バイトって家庭教師だろ、何でそんなに疲れるんだ?』
「受験シーズンだからな、親も大変なんだよ。色々と相談されてさ。そういうのって精神的に結構きついんだ」
 洋平は再び「ふうっ」と大きな溜息をついた。
『でも由美加ちゃん、すごく頭の良い子だって言ってなかったっけ?全国模試でも上位にいるって言っていた様な気がするけど』 
「だから余計大変なんだよ、失敗が許されないからな」
『確かに』
 秀樹も納得したようだ。
 洋平が教えている生徒は中野由美加と言い、後一ヶ月程で受験を控えている中学三年生だ。かなり優秀な子で全国でも百番以内には入っているだろう。周囲からの期待も高く、本校創立きっての才女と教師達も口々に言っている。だからこそ失敗が許されないのだ。(そんな優秀な子を教える洋平は、優秀なのか・・・?多少の疑問は残るがそこは於いといて。)受験生本人のプレッシャーは勿論。両親のプレッシャーも相当なものだろう。ノイローゼに成らなければ良いのだが、ここ最近、由美加の様子がおかしいのだ。その事もあって今日は両親と時間をかけて話しをしていたのである。メンタル的な部分も家庭教師の仕事と言う訳だ。
 洋平は差し支えない程度の内容を説明した。
『そうか。大変だな!じゃあ余計に気分転換をしに出てこないか?』
 少し間を空けて、
『今日サークルの打ち上げがあって、今千葉と白河が一緒で、三人で二次会に行こうと思うんだけど、中山さんも誘ったんで、男一人に女三人というのはどうも居心地悪いから・・・。頼むよ」』
 電話の向こうで哀願する秀樹の姿が見えるようで、洋平は苦笑しながら。
「でももう九時過ぎてるんだぞ」
『カラオケに行くから全然大丈夫な時間だよ』
「場所は?」
 洋平は仕方なさそうに質すと、
『来てくれるのか!有難い。いつのもカラオケ屋だけど、何時頃来られる?』
「そうだなぁ」
 チラッと掛時計に目を移し、
「十時前には着くように行けると思う」
『分かった。じゃあその頃に来るって皆には言っとく・・・。よろしく!』
 秀樹は洋平からの返答を待つ前にそそくさと電話を切った。
 洋平は携帯電話を閉じると、後ポケットから財布を取り出し中を確認した。中には千円札が三枚と小銭が少々しか入っていない。
「あちゃ」
 しかめっ面をしながら再び携帯電話を手に取った。着信履歴を表示させて、リダイアルさせようと思ったが、一番上の履歴には、先程かかってきた秀樹からの履歴ではなく、何故か白河緑の名前があった。
「?」
 一体何が起こったのか解らなかった。
 白河緑の事は知っている。彼女は学年が一つ下だが、秀樹と同じ『歴史研究会』という小難しいサークルに所属しているので、何度か話をしたことがある。長髪の可愛いというより綺麗な感じの女性だ。性格もおとなしそうに見える。
 それ程親しいわけではないし、まして携帯番号など知りはしない。登録していない名前がなぜ表示されるのかが不可思議である。確か着信の時は土井秀樹と表示されていたはずだ。
 洋平は首を傾げながら、もう一度目を凝らして確認してみた。間違いなく白河緑と書いてある。その名前の下には、見たこともない番号が並んでいた。
 再び首を傾げながら、電話帳から秀樹の名前を検索し電話をかけた。二・三度コール音が聞こえると、
『もしもし』
「洋平だけど、今日お金の持ち合わせがないんだけど、どうしようか?」
『はっ?何言ってんの?』
間の抜けた返事が返ってきた。
「さっき言ってたカラオケだけど、今手持ちがないからどうしようかと思ってさ」
『カラオケ?何の話だ?』
 とぼけているのか、本気なのか。
「ちょっと前に電話で、サークルの飲み会があってその二次会で、麻美や千葉、白河さん等と一緒にカラオケ行くから出て来いって・・・」
『俺お前に電話なんかしてないぞ。それに飲み会なんかしてないし。』
「・・・」
『お前寝惚けてるのか?俺七時からずっと『どっこいモノマネ大賞』を視てたんだぞ。』
 そう言えば今日学校でそんな話をした。今日はモノマネのテレビがあるから早く帰らないと初めから視られないという様な事を言っていた様な気がする。
「そう言えばそんな事言ってたな・・・」
 間の悪い時間が数秒。
「ところでお前白河さんの連絡先知ってる?」
 洋平はバツが悪くなったのか話題を変えた。
『同じサークルだから知ってるさ。・・・あっ。お前も白河狙ってるのか?競争率高いと思うけどな。結構可愛いから人気があるぞ』
「いやそう言う訳じゃあないんだけど、ちょっと気になることがあってさ」
『気になる事って?』
 洋平は先程秀樹(と思われる?)からかかってきた電話の内容と、その後なぜか知らないはずの白河緑の着信履歴が残っていたという話をした。
 何かの勘違いだろうという様な事を秀樹は言っていたが、その後白河緑の連絡先を聞き、先程掛ってきた電話番号と照らし合わせてみると番号は完全に一致していて間違いなく白河緑の電話番号だとわかった。
『何だかよく分からないけど、俺は電話なんかしてないぞ」』
 秀樹は念を押すように言うと、テレビの続きを視るからと言って電話を切った。
 洋平は再度着信履歴を確認してみる。やはり何度見てもそこには白河緑の名前と今秀樹から聞いた番号が表示されていた。その番号にかけてみようかという衝動に駆られたが、白河緑に繋がったところで何を話していいかわからない。それ程親しくはないのだ、突然の電話を不審に思うかもしれない。気にはなるのだが結局諦めてテレビを点けた。
 『どっこいモノマネ大賞』をやっていて、既にクライマックスで大御所同士の最終対決をしている。流石に人気があるだけあってそれなりに面白く、先程起こった奇妙な出来事が脳裏から消え去る程、腹を抱えて笑った。
 番組が終わり、風呂にでも入ろうかと立ち上がった時、
『ピリリリッ・・・。ピリリリッ・・・』
 テーブルの上に置いてあった携帯電話が鳴った。洋平は電話を手に取り、着信表示を確認する。
「!?」
 そこにはまた白河緑の名前が表示されていた。
「はい。・・・神崎です」
 恐る恐る取る、
『・・・・・・・・・・』
 何の返事もない。
「もしもし。神崎ですけど。・・・白河さん?」
『・・・・・・・・・・』
「もしも・・・」
 再び問いかけようとした時、受話器からキーンという甲高い音が鳴り響いたかと思いと。老婆のようなしわがれたこ声で、
『どうして来てくれない・・・・・。どうして来てくれない・・・・・の。ずっと待ってるのに・・・・・・・・た・す・け・て』
 再びキーンという甲高い音がすると、
『プーッ。プーッ。プーッ』
 不意に電話が切れた。




 2へ続く

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