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『幽体離脱はお好きですか?』 完

オカルト探偵俱楽部2 

『幽体離脱はお好きですか?』 完





 

外が何やらざわついている。そうしているうちに警察がやってきた。傍観者の誰かが警察に連絡したのだろう。

「君たち、何をやってるんだ?」

 警官はどちら共というわけでなく問いかけた。

「丁度良かった。最近この辺りでひき逃げ事件がありませんでしたか?」

 洋平が警官の問いに返答もせず、背を向けたまま逆に問いかけた。

「二日前、この近くで確かにひき逃げ事件があったが、それがどうかしたのか?」

「その事件は今解決しました」

「はあっ??」

「ここにいる男達が犯人です」

 警官は“こいつ何言ってるんだ”と言わんばかりの表情で、

「ちょっと君、こちらに向きなさい」

 多少慇懃無礼気味に言った。そして振り返った洋平を見て、他の者と全く同じ対応をとった。

「この人達の車を調べてください。確かな証拠が出てくると思います」

 洋平は何事も無いように、淡々と言葉を進める。

「それと撥ねられた少年が入院している、久保西総合病院に連れて行ってもらいたいのですが」

 かなり唐突で理不尽な事を言っているが、洋平の紺碧の瞳を見ると、そうしなければならないというような感覚に陥ってくる。この警官も例外に漏れず、洋平の瞳に飲み込まれてしまったようだ。

 携帯電話で応援を呼び、数人の私服警官、俗に言う刑事が来ると簡単に事情を説明して、自分自身の行動が分からないまま、着替えを終えた洋平をパトカーで久保西総合病院まで送っていった。秀樹達も後から追ってきた。

 病院に着くとその警官は看護師に了解を取り、慎介が入院している部屋に入る。個室のベットで少年が眠るように横になっている。本当にただ眠っているだけのようだ。しかしこの状態が既に三日続いている。家族にとっては落ち着ける状況ではないことは理解できる。

 その部屋には少年以外誰もいなかった。ほんの先程まで母親が付き添っていたのだが、今は少し席を外しているようだ。看護師はそう説明すると、帰る時には一声かけて欲しいと言い残しナースステーションに戻っていった。

 洋平は慎介の横に立ち彼の顔をじっと見つめていたが、しばらくすると頭を持ち上げ正面に向いた。そこにはもう一人の慎介が立っている。

「そろそろ自分の身体に戻ろうか」

 洋平は正面に立つ慎介に声をかけた。周りにいる者も今回は驚きもせず成り行きを見守っている。

『どうやって戻ればいいんですか?』

「心の底から帰りたいと望めばいい」

『前もそう思ってやってみたのに、どうしても戻れなかったんですよ』

 不安気味に答える。

「それはまだ心のどこかに、本当に戻れるのか?戻れなかったらどうしよう!という気持ちが残っていたからさ。今回は僕も手伝うから大丈夫。それにまだあちらの世界は君が来るという予定はないようだ。」

『あちらの世界というのは、死後の世界のことですか?』

「世間一般ではそういう言い方をすることになるのかな。あちらの世界にも都合というものがあるらしく、今のところそういう予定はないと言っている」

『言っている?』

「君の横に年配の女の人が立っている。上品で優しい感じの人だ。君の祖母だと思う。・・・その人が君はまだこちらの世界にとって招かれざる者だと言っている」

 慎介は首を左右に動かし何かを探しているような仕草をとった。しかし何も見つからない。

 洋平が小声で何かをぶつぶつと呟き始めた。慎介は何を言っているのか聞き取ろうと聞き耳を立てていると、左後方で強い光が射し込むような感覚に襲われた。振り返る。

 そこにはモノクロの写真でしか見たことはないが、紛れも無く母方の祖母が立っていた。

『慎介、お前にはまだやる事が沢山あるでしょ』

おばあさんはそう声をかけると小さく微笑む。その優しい微笑みに慎介の身体が反応した。“そうだまだやりたい事がいっぱいあった。早く元に戻らないと。”そう思った時、何かに吸い込まれるように身体が引っ張られた。それもとても心地良い感覚で。ほんの数秒で慎介の姿がその場から消えた。そしておばあさんの姿もなくなっていた。

その時ベットに眠っていた少年の手がピクリと動いた。洋平はそれを確認すると何事も無かったかのように静かに病室を出て行った。

 

病院を出たときには洋平の瞳は本来の色・・・日本人特有の漆黒の瞳に戻っていた。

翌日新聞に小さく<ひき逃げ犯逮捕>という見出しのニュースが載っていた。そしてその日の夜あの時の警官から、少年の意識が完全に戻ったという連絡が入った。

 

それから数週間後、洋平と麻美が久し振りに二人で歩いていると、正面から4人の学生が歩いてきた。学校の補習授業か何かの帰りだろうか、四人とも制服を着ている。男二人女二人というありきたりの組み合わせだが、楽しそうに話をしていた。

彼等と擦れ違う際、その中の一人の男子生徒が立ち止まり洋平に小さく頭を下げた。洋平も足を止め軽く会釈をする。そして何の会話も無く擦れ違った。

そんな二人のやり取りに

「あの子どこかで会ったことがある様な・・・」

 麻美が首をひねる。

「洋ちゃん今の子誰?」

 洋平に回答を求めた。

「名前は知らない」

 洋平は短く答えると、再び歩き始めた。

 その後方で、少年・・・風間慎介はもう一度振り返り、今度は大きく礼をするように深く頭を下げた。

 

 

 

 





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