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「嗤う鬼火」 2

お薦め文庫バナー2 
   最近読んだ本で、個人的に面白いと思ったものを紹介しています。 


嗤う鬼火バナー 

 夜の人恋坂は人気もなく寂しい雰囲気が漂っている。今午後十一時、私達四人は恐る恐るゆっくりとした歩みで坂の頂上に向かって歩いていた。先頭を歩いているのは中馬君、その後ろに美歩ちゃん、そして私、最後に倉橋君が少し間を開け、相変わらずの無表情で付いてきている。この状況の場合最前列か最後列が一番怖い。最近の草食系男子が多い中、彼等はちゃんと男としての気遣いを分かっている貴重な肉食系男子なのかもしれない。

 先頭の中馬君が歩く速度をゆるめた。この暗闇の中、懐中電灯一つで動いていると、前の人の行動一つ一つに敏感に反応してしまう。しばらくゆっくりとしたペースで歩いていたけど、頂上にある唯一の街灯の元に着くと少しばかり緊張感が和らいだ。小さい明かりながらも四人の姿を一度に確認できると気持ちも落ち着く。

「しかし暗くて気持ち悪い場所だな!」

 静寂の中、中馬君がトーンを落とした声で言った。街灯の明かりが返って周りの闇を増幅しているようにも感じられた。そんな中中馬君は懐中電灯で目の前にある墓地を不作法にも照らしながら。

「あそこにある墓地が例の場所で、この道沿いからでも鬼火は見えるってことだけど、出てくるかな?・・・もう少し先に行ってみようか?」

 私達の了解も得ないまま中馬君は再び歩き始めた。仕方なく私達も後に続く、こんなところに置いてけぼりにされてはかなわない。後ろの倉橋君は居るのか居ないのか分からないくらい静かで、違う意味で怖いような気がする。私は背中に何となく悪寒を感じ、ゆっくりと振り返った。そこには顔を横に向け何かに焦点を合わせるように集中している倉橋君の姿が。

 その精悍な顔つきに思わず見とれてしまった。やばい!やばい!今はそんな状況じゃなかった。私は我に返ると彼の見つめている方向に視線を向ける。

「?!」

 腰が抜けるかと思った。

「あ・・・あ・・・あ・・・」

 声にならない。私の異変に気付いたのか中馬君と美歩が私の方を向き、今度は二人が私の視線の先を見て私と同じように硬直した。

「あっ!」

「えっ!」

 各々気持ちいい程よく似た反応をし、ギリシャ神話のその瞳を見ただけで石に変えてしまうと言う魔神メデューサを見てしまったような感覚とでも言うのか、同じような姿勢で同じような顔をして微動だにしない。

 私達四人の視線の先にはゆらゆらと青白く発光した浮遊物があった。

 その時誰かが不意に私の肩を叩いた。私はそれに反応するように振り向こうとしたが、ん!思いとどまる。確か私達は縦一列で歩いていた。今見えている現象はほぼ真横で起こっているので今は横一線になっているはず。・・・・・ということは・・・・・。

 まず左右を確かめてみる。右に美歩、その向こうに中馬君。左には倉橋君が確かにいる。背後に誰かがいるということは絶対にありえない。・・・・・全身に鳥肌が立ってきた。今までに感じたことのない凹凸の凸の部分が身体全体にざわざわと覆っていくのが感じられる。

 私は恐怖のあまり左横にいた倉橋君の腕を強く掴んだ。その行為に倉橋君が私の方に向く。相変わらずの無表情で、何を考えているのか分からない雰囲気はそのままだが、今の私には倉橋君がこっちを向いてくれているという事と誰かに触れているというだけですごく心強く感じられた。

 でも何となく背後に何かいるような気配を感じる。一度そう思ってしまうと後ろが気になってしまい落ち着かない。私は恐怖の中、それに打ち勝つように自分自身に気合いを入れゆっくりと振り返った。しかしそこには何もない。漆黒の闇と、静寂のみが存在するだけだった。

 気のせい!?

 大きく安堵の息をつき向き直る。そのとき倉橋君と目が合ってしまった。傍から見れば情緒不安定ともとれる行動を倉橋君に見られたと思うと、全身の血液が頭に集結してきたかのようにポーッとして顔が赤くなっていくのが自分でも解った。

 でも倉橋君は何も言わず顔を正面に向ける。相変わらず無愛想。私も同じように前に向き直った。

「あっ!」

 目の前の鬼火が二つに増えている。中馬君も美歩も食い入るようにそれを見ていて、先程とポーズすら変わっていない。本当に石になってしまったのだろうか?

私はまたしても背後から悪寒を感じもう一度振り返る。当たり前だが誰もいないし何もない。

 不意に倉橋君が動いた。私はまだ彼の腕を掴んでいたのでその動きに敏感に反応し手を離す。倉橋君は微妙な距離で私の後ろに立った。後ろから倉橋君の息遣いと放射体温が感じられる。今の私の行動から背後を気にしていると感じたのかさり気なくしてくれるその優しい心遣いに感激!本当に好きになってしまいそうだ。

 倉橋君が後ろにいると思うだけで、私の恐怖はあっという間に守られているという安らぎに変わっていった。

「キャーッ」

 突然の悲鳴!発したのは私の隣にいる美歩だった。美歩の方に向こうとしたとき、私もその悲鳴の原因を見てしまった。正面に見える一つの墓石の前にこちらを向いて立っている一人の女性の姿が。今までこの場所には私達四人の他には誰もいなかったはず。

 その女性は何かを羨むような悲しい目をして立っていた。実体がはっきりしていなくて、何となく向こう側の墓石が透けて見える。

(も、もしかして幽霊!?)

 その女性はしばらくその場に佇んでいたが、少し俯き加減になるとその実体も少しずつ薄くなっていき、完全にその場から消失した。

「み、見た?」

 美歩がそう言うか言わないかのうちに、ゆっくりと後退していき、私達は逃げるようにその場から離れ、学校まで一目散に走った。逃げるのに精一杯で周りのことを気にする余裕など無かったが、学校の正門まで来ると、

「あれっ、倉橋君は?」

 少し落ち着きを取りもでした私は、倉橋君が居ないことに気付き肩で息をしながら二人に問いかけた。二人も周りを見渡して、

「本当だ!どこ行ったんだろう?」

 美歩が少し心配そうに言ったが、中馬君は慌てる風もなく、

「まあ、あいつのことだから大丈夫だろ」

どこがどう大丈夫なのか解らなかったが、私もまだ頭が少々パニックになっていたのでそれ以上のことを考えることが出来なかった。

 その時中馬君の携帯が鳴った。

「おっ!噂の巧己からだ。もしもし・・・・・ああ・・・・・それで・・・・・で、今どこにいるんだ・・・・・分った伝えとく。それじゃあ俺たちは先に帰るからな・・・・・了解」

 話の内容はさっぱり解らなかったが倉橋君に何事もなさそうなことは判った。中馬君は電話を切ると私に向かって、

「巧己のやつまだ人恋坂にいるらしんだけど。倉橋に伝言だとよ」

「えっ!まだあそこにいるの!」

 これは美歩の言葉。あの倉橋君が私に伝言って・・・!少し嬉しいような、でも何となく不吉な予感もする。あんな所に深夜一人でいるということ自体私には考えられない、それに、

「伝言って何?」

 多少の不安を抱えたまま聞いた。

「逃げているとき青白い球体が倉橋の方に向かっていってぶつかった様に見えたから大丈夫かって」

 不安的中。でも私はそんな衝撃を感じた記憶は無いけど・・・。

「何ともないけど」

「それと・・・」

 まだ何かあるのだろうか。少し言いにくそうな雰囲気に嫌な不安がまた少し膨らんだ。

「今日寝るときに十分注意して、出来れば一人で寝ない方がいいって」

 中馬君から伝えられた伝言に不安と書かれた風船が極限まで膨れあがり破裂直前にまで膨張している。しかしその膨れあがった不安をどうすることも出来ないままボーッとしていると、

「まあ、余り気にしない方がいいと思うぜ。あいつ昔から意味深な言い方をするところがあるから」

 あの中馬君が気を遣ってくれている。

「明日は日曜だし、私志緒ちゃんの家に泊まろうか?」

 美歩も気に掛けてくれている。ひょっとして私、友達に恵まれてる?こんな状況だけに涙が出そうになる。

 結局美歩ちゃんが私の家に泊まってくれることになった。その夜に何も起こらないに超したことはないが何だかよからぬ事が起こりそうな気配・・・・・嫌だな。

 

 

 

 

最初から読む       「嗤う鬼火」3に続く



では後ほど!




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