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「嗤う鬼火」 5

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   今までに書いたイラストや小説の保管場所。最近読んだ本で、個人的に面白いと思ったものを紹介しています。


 

第二章 「解析」

 

 

 約束の時間の一〇分前には何とか喫茶アルテイシアに着いた。外観はいつも見ているが、近くでまじまじ見るとやはり独特の雰囲気を感じる。道沿いに面している壁には小さな丸い窓が二つ程あるだけで、その窓の間に大きく両開きの扉が存在感を出している。その扉の上に小さく『喫茶アルテイシア』と書かれたモニュメントがありこれがなければ何の店か判らないだろう。

 私は始めて入る店に少し緊張しながら取手に手を掛けるとゆっくりと開けた。予想はしていたとはいえ店内は別世界に迷い込んだような感覚を私に与えその場に立ち尽くしてしまった。

「おーい!」

 奥の方から聞き覚えのある声が・・・というか昨日も聞いていた声が聞こえた。私達に気付いた中馬君が手を挙げている。一番奥の席に倉橋君と向かい合わせに座っていた。

 私達はそのテーブルまで行くと、空いている席に座る。当然のように美歩は中馬君の隣に座ると、必然的に私は倉橋君の横に座ることになる。・・・少し緊張・・・

「いらっしゃいませ!」

 若い女性の声が近くで聞こえた。私は声のする方に振り返ると、

「!」

 何処かで見たことのある顔・・・、そうだ二年の倉橋佐緒里さんだ。この学校にこの地域では珍しい倉橋性が三人いてその一人が彼女だ。三人もいれば珍しくないような気もするけど・・・。

「ご注文は?」

 佐緒里さんが慣れた声色で注文を取る。

「俺はコーヒー。お前らは?」

「私はレモンティー!」

 私も美歩と同じレモンティーにした。

「コーヒーとレモンティーね。巧巳はいつものでいいよね」

 横の倉橋君が小さく頷く。・・・・・って、な、何で呼び捨て?それも下の名前で。私は倉橋君の方に向き、その整った横顔を見つめながら、

「倉橋君ってお姉さんいたっけ?」

 取りあえず聞いてみる。

「いいや」

 相変わらず言葉が短い、短すぎるぞ!これでは会話にならないじゃないの。

「佐緒里さんは一応巧巳の従姉にあたるんだよ」

 中馬君が注釈を入れてくれた。

「一応?」

「従姉っていっても、ここのマスターは巧巳の叔父にあたるんだけど、佐緒里さんはマスターの再婚した奥さんの連れ子だから形式上は従姉だけど、血縁上は他人なんだ。だから一応」

 このアンティークな喫茶店が倉橋君と関係があったなんて、しかも佐緒里さんとの関係も複雑だ。恋愛に発展しないとも限らない。

 学校でも倉橋君には隠れファンのような輩が結構いる。でもいつもの無愛想さで誰も声を掛けられずにいるのが現状だ。そんな中、私は中馬君と美歩のおかげで少し近い位置にいて他より一歩リードしていると思う。

佐緒里さんが倉橋君のことをどう思っているかにもよるけど、強敵が現れた。

「まあ、そんなことはどうでも良いことだから置いといて、例の事件のことで巧巳が何か気付いた事があるらしいんだ」

私にはどうでも良くない!それに昨夜の出来事が事件になっている。少し大袈裟じゃない?

「気付いた事って何?」

 美歩が興味深そうに身を乗り出して訪ねた。

「昨日の鬼火だけど、あれは作り物だ!」

 倉橋君がまたまた大胆な発言。

「鬼火って作れるの?」

 これは私の素朴な意見。

「割と簡単に作れるさ、材料も大した物はいらないし手間もそれ程かからない。作り方は・・・。」

 倉橋君が言うには、綿の布と糸(毛糸のようなものがベストらしい)があれば本当に簡単にできるそうだ。まず綿の布を適当な大きさ三~五センチ四方位に切って、それをボール状に丸め、その上から糸をぐるぐると巻き付けて綺麗な球状にする。それにライターオイルを染み込ませて火を着けると鬼火のような青白い炎に成るのだそうだ。

 その火を細いワイヤーか何かで吊るせば、あたかも浮遊しているように見せることが出来、鬼火というのは基本的に夜に出現する物なので、ワイヤーなどは目に見えることはないらしい。

「確かにあの場所は鬱蒼としているから、そういう細工はやりやすいかもな!」

 昨夜のあの場所を思い出してみる。夜にそれも歩いて行ったことがなかったので、今まで何とも思わなかったが、実際に行ってみると夜の人恋坂の頂上は決して気持ちの良いものではない。木々が左右に鬱蒼と茂り、ただ一つの街灯が逆に寂しさを増強しているようにも感じられる。そして問題の墓地もそれに加算する様に雰囲気を醸し出している。

 中馬君の言っていることは確かに当たっているような気がする。

「でも誰が何のためにそんなことを?それにいつどういうタイミングでするの?」

「そんなこと俺が分る訳無いじゃないか!」

「毎日鬼火を作っているわけでもないだろうし、私達はたまたま偶然居合わせたってこと?」

 私と中馬君との会話が途切れて、その場に僅かに静寂が訪れた時、倉橋君が沈黙を破るように言った。

「あの鬼火を作った者の意図は分らないけど。なぜ俺達があの日鬼火を見たかということを推測すると、二つ・・・いや三つ程臆見がある」

 倉橋君以外の残りの三人は次の言葉を固唾を飲むようにして待った。

 

最初から読む      「嗤う鬼火」6に続く



では後ほど!





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