「嗤う鬼火」 6

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   今までに書いたイラストや小説の保管場所。最近読んだ本で、個人的に面白いと思ったものを紹介しています。


「まず一つ目は、本当にたまたま居合わせた。二つ目は俺達が人恋坂に行くということを知っていた誰かが先回りして工作した。そしてもう一つ考えられるのが・・・俺達の中に犯人がいるかだ」

 倉橋君は言ってはならないような事を言っているような気がする。でもそうは思いたくは無いけど一つの選択肢として可能性的にはあり得る。

「消去法で考えてみよう。まず最初の偶然居合わせたというのは、確率的にも低いと思うし、鬼火の出現したタイミングに必然性を感じるので、ほぼ無いと思う」

 私も横で頷く。確率は低くても偶然のいうのはあり得るが、あの絶妙のタイミングでの鬼火出現は意図的な何かが感じられる。

「まあ絶対無いとはいえないけどな!・・・二つ目の俺達が人恋坂に行くのを知っていた誰かが先回りしてというのも行動理由が今一はっきりしないし何のために俺達に鬼火を見させたのかという理由も分らない。ただ驚かせようと思ってやったとしても手が込みすぎている」

 その意見についても十分納得できた。

「そして最後の俺達の中にということになると・・・」

 倉橋君はここで言葉を切った。少し言いにくいことなのかもしれない。

「まあ、もしこの意見が正解なら自ずと犯人は分ってくる」

 表情を一つも変えずにそう言いきる倉橋君はニヒルでクールでかっこいいけど少し怖く感じられた。

「それなりの知識があって、あの場所に行くのを知っていて、かつこんな細工が出来るのは・・・この中では・・・」

 私はしばらく呼吸を止めてその先の言葉を待った。他の二人も同じような表情で見守っている。

「中馬!お前だよ」

 倉橋君は中馬君の方に向かって言った。私と美歩も釣られるように中馬君の方に向く。

「・・・・・」

 中馬君は何も答えない。

「まさか賢君が・・・?」

 美歩も呆然としている。

「あの時の状況から考えて、あのタイミングで鬼火を出現させる事が出来るのは中馬しかいないんだよ。それにお前化学好きだったよな?」

 みんな静まりかえって中馬君を凝視している。中馬君も倉橋君から視線を離さず男二人の睨み合いがしばらく続いたけど、中馬君が不意に視線を外し少し笑い顔で答えた。

「巧巳の言うとおり鬼火を作ったのは俺だよ。ある雑誌で鬼火の作り方を見たとき、『嗤う鬼火』の事を思い出して、みんなをびっくりさせようと思ってしたんだよ」

中馬君が白状した。

「冷静に考えてみると、あの人恋坂に行こうと言い出したのはお前だし、日にちや集合時間を指定したのもお前、そして先頭を歩いて目的地まで先導したのもお前だったよな。あの時随分時間を気にしていたみたいだから、微妙な時間調整をしてたんだろう?」

 倉橋君が淡々と答える。

「鬼火の細工は前日に翌日の午後十一時くらいに発火するように仕掛けて置いたんだろう。市販のオンオフタイマーでも使ってな。最近の市販のタイマーは安くて高機能のものもあるからな」

中間君はちょっとした悪戯心でみんなを驚かそうと思ったらしいのだが、倉橋君の説明を聞きよくよく考えてみると私の稚拙な脳味噌でも細かい部分まで十分理解できる。美歩も少し呆れ顔で中馬君のことを見ていた。

(でもあの女の幽霊は・・・!それと私の肩を叩いただれかの事と倉橋君が言っていた白い球体、そして昨夜の夢であって夢でないような奇妙な体験は?)

 鬼火については理解できた。でもその他の現象についてはまだ分からないことばかりだ。

 私が漠然とそんなことを考えていると、私の心を読み取ったかのように、

「でも俺がしたのは一つの鬼火だけで、もう一つの鬼火とあの女性の霊のことは知らないぞ」

 中馬君は一部を認めたものの、他の出来事については否定した。ということは一つは本物の鬼火って事?

「ということは、一つは本物の鬼火って事か!」

 倉橋君も同じ事を考えていたようで、それを声に出して言い少し考え込むような仕草を取った。左手の人差し指で鼻の頭をゆっくりと擦るようにして何かに集中している。

 これって倉橋君が何か複雑な思考をするときの癖なのかな?でも名探偵ぽくって格好いい!

 頭の中でいつもの妄想に耽っていると、

「ところで倉橋!その右手どうしたんだ?」

 中馬君が自分のしたことを見抜かれてバツが悪くて話題を変えようと思ったのか、それとも今頃気付いたのか、右の手首に付けていたリストバンドを見ていった。

「あっ、これ?」

 私は右手を差し出すようにみんなの目に置くと、どう説明しようか迷いながら、昨夜の夢のことと、朝起きたら夢で掴まれた所と同じ箇所に痣のようなものがあったことを、出来るだけ詳細に話した。そしてリストバンドを外しみんなにその痣を見せた。

「何かすごいことのなってるな!これって痣?」

「多分そうだと思うけど、倉橋君はどう思う?」

 私は倉橋君の前に腕を差し出した。倉橋君は先程の思考から我に返ると、しばらくその痣を見ていたが、何かを感じたのか私の腕を掴んだ。

 ドキ! 血圧が少し上昇。

 私の手首を大切なものを触るかのように丁寧に、そして慎重に扱った。そして力の抜けた私の腕を優しくそっとテーブルの上に置くと、

「これ痣じゃないな!」

「!?」

 鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていたのだろう。倉橋君は優しい笑みを私に向けゆっくりと口を開いた。

「痣が着くということはかなり強い圧力をかけないと着かない。まして手首に着くなんて想像上の痛みを伴うと思うし、この痣の着き方はおかしい」

 そう言うと倉橋君は再び私の腕を取るとその痣の位置に自分の指先を合わせるように掴む。不意に掴まれたこともあってか、再び血圧上昇、さらに脈拍も。

 そんな私の内部行動をよそに倉橋君は、

「この状態から力を入れると・・・」

 手首にちょっとした圧力が掛り痛いという程ではないがそれなりの圧迫感を感じる。

「倉橋痛いか?」

 私は首を横に振った。

「普通痣と言うのは皮膚の色素細胞の異常増殖や、皮膚の内出血によって赤紫色に変色することなんだけど、手首のように細いものを掴まれたときには圧が円状に掛り手首に輪のような痣が出来るんだ。まして手首の細い女性なんかは特にな」

 そう言われてみれば今私は手首全体に圧力を感じている。この力の掛り方だと手首を巻くように痣が出来そうだ。

「だったらこの痣みたいなものは何なんだ?」

 中馬君が結論を求めた。

「はっきりしたことは判らないけど、霊傷じゃないかな?」

「霊傷?」

「凍傷みたいなものかな!」

「凍傷?この真夏に?」

 釈然としないのか、首を傾げながら自分なりに思考を整理しているようだ。でも霊ということをベースに考えるとあり得なくもないような気もする。

「でも何でそんなことがわかるの?」

 いままで黙って私達の話に耳を傾けていた美歩が素朴な疑問を口にした。確かに何で倉橋君にそんなことがわかるんだろう。





 

最初から読む      「嗤う鬼火」7に続く



では後ほど!




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