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「嗤う鬼火」 14

img044.jpg     お薦め文庫バナー2


   今までに書いたイラストや小説の保管場所。最近読んだ本で、個人的に面白いと思ったものを紹介しています。



 


 

  志緒理達がそんな話をしていた頃巧巳は神社に来ていた。佐緒里の調べた資料を神主である三宅に見せながら、

「どう思います?」

「多分この女性だろうね。悪い物では無いとは思うが少し厄介だね」

 資料に目を通しながら三宅は唸っている。その資料には十五年前の事故のことが書かれていた。

 およそ十五年前、この人恋坂で一つの事故が起こった。一人の女性が車で崖から転落し死亡するという事故だ。その女性は一ヶ月後に結婚式を控えていた。その日は仕事を終え彼のもとに行く途中の出来事で、人恋坂の頂上付近を走行中ハンドル操作を誤り崖から転落してしまったようだ。救急隊が来たときには既に虫の息だったようだが、彼の名前と、彼に会いたいという言葉を小さな声で発し続けていたという。

「でも何故この女性が倉橋に?」

「多分、あの子が巧巳君を思う気持ちと波長が合ったんだろうね。彼女の身体に憑いて恋人の所に行こうと思ったのではないかな。まだ未練が断ち切れていないのかもしれない」

「どうすればいいですか?」

 三宅は腕を組みしばらく考え込んでいた。

「その時の婚約者だった彼に会わせてやるのが一番かもしれないね。今、彼女が志緒理君の中にいるのなら、志緒理君を彼に会わせれば未練を断ち切ることが出来るかもしれない」

 三宅は手に持った資料を見ながら、

「この片岡圭一という人は今どこにいるんだろうね」

 

 

 

「志緒理さんは巧巳の何処が好きなの?」

「どこって言われても・・・」

 私は人恋坂の頂上で佐緒里さんとぎこちない会話をしていた。ここについてすでに十五分が経っている。早く倉橋君こないかな。

「それにしても、巧巳遅いわね!」

 ぎこちない雰囲気に佐緒里さんも少し戸惑っているのか強い口調で言った。私はまたしてもどう答えてよいか分からない。視線を佐緒里さんに向けることが出来ず坂下の方を見ると、

「あっ、来た!」

 坂の麓の方に小さく見える倉橋君の姿を見つけた。倉橋君はゆっくりと坂を上がって来ていたが、その姿を見るだけで今までの緊張感が緩和されてくる。ものの数分で私達のいる場所までたどり着いた。

「遅い!どこに寄り道してきたの?」

 相変わらず強い口調だ。でも倉橋君は慣れているのか動じることなくゆっくりと私達に近づいてきた。

(えっ!)

 倉橋君が私の前まで来た時、今まで明るかった空が急に淀んできて、辺りが暗く鬱そうとしてきた。みるみるうちに暗くなってくる。どう考えても午前十一時の明るさではなかった。

「来たか!」

 倉橋君はそう言って、墓地の反対に当たる崖の方を見た。私も佐緒里さんもつられるようにそちらに向く。

「!」

「!」

 その崖のふちに白いワンピースに紺のカーディガンを羽織った清楚な感じの女性が立っていた。その女性は私の方をじっと見ているように感じる。

 私はその女性に見覚えがあった。先日私の手首を掴んで何かを訴えようとしたり、昨夜腹部から覗き込むように顔を出していたあの女性だ。足がガクガクと震えてきた。自力で立つこともままならない程の恐怖が私を襲い、その場に座り込みそうになった時、隣にいた倉橋君が私の両肩を左側から抱えるように支えてくれた。震えが徐々に収まってきて、心地よい安心感が私を包み込んだ。

「あなた、野瀬弘美さんですね」

 倉橋君が目の前にいる白いワンピースの女性に呼びかけると、その女性の視線が倉橋君の方に向く。

「巧巳、彼女何なの?」

 今まで黙っていた佐緒里さんが、今までに聞いたことのないうわずった声で、倉橋君の左腕にしがみつきながら言った。その姿に私は少し嫉妬を感じてしまった。でも私の方が倉橋君と密着してるもんね。て、こんな時に何考えているんだろう。今はそうゆう状況ではないでしょ!でも何故私と佐緒里さんにも白いワンピースの女性が見えるんだろう?

「野中さん、あなたはもうこの世に存在していないんですよ。あなたの無念さは察しますがこの子には何の関係もないはずです」

 倉橋君の手に力がこもったことで、私は現実に引き戻された。

「かつてのあなたの恋人片岡圭一さんという方はまだ結婚していません。よほど貴女のことを愛していたのでしょう。彼も苦しんできたんです。彼の貴女に対する呪縛を貴女自身で解いてあげたらどうですか?」

 ワンピースの女性に変化がでてきた。

『私は圭一さんに会いたい、ただそれだけ』

 無表情だが目だけは何かを訴えようとしている。その顔を見ていた時、ふと脳裏に浮かぶものがあった。

片岡圭一!

どこかで聞いたことがあるような、どこだろう?私はここ数日間の出来事を思い出しながら考えた。

「!」

 そうだあの新聞記事。私もしかしたらその片岡圭一さんて人見つけることが出来るかもしれない。

 そんな思考の中で僅かに見えていたワンピースの女性、野瀬さんの姿が少しずつ薄くなっていくのが見えた。そして周りの景色がいつもの風景に変わると、私は気が抜けたように全身が脱力してきた。隣にいる佐緒里さんも同じ感覚に見舞われているようだった。

 

 

 


最初から読む       「嗤う鬼火」15に続く



では後ほど!





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