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「嗤う鬼火」 15

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   今までに書いたイラストや小説の保管場所。最近読んだ本で、個人的に面白いと思ったものを紹介しています。



 


 第五章「収束

 私達は今新聞社にいる。今日は佐緒里さんがいないので二人きりだ。むふふ! 昨日片岡圭一さんの名前がその日の朝刊に載っていたことを倉橋君に話すと、早速連絡を取り次の日の夕方に会う段取りを取った。仕事が早い!それに佐緒里さんは家の手伝いで今はいないので二人だけだ。

しばらくロビーのようなところで待っていた。結構広いロビーで、丸テーブルとそのテーブル毎に背もたれの高い木製の椅子が四脚ずつ、全部で六セットある。ちょっとしたカフェテラスのようだ。二人で座っているとデートをしている気分。私がそんな感慨に浸っていると、奥から一人の男性が現れた。年齢は四十才位かな。きりっとした顔立ちで、背も高く新聞記者のようには全く見えない。その男性は私達に近付くと、

「倉橋さん?」

 少し警戒した面持ちで話しかけてきた。

「はい」

「はい」

 二人同時に返事をして椅子から立ち上がった。その男性はびっくりしたような顔をしている。お~!まさにシンクロ!

「すみません、二人とも名字が同じものですから」

「二人は親戚か何かですか?兄妹というわけではなさそうですし」

「いえ、たまたま名字が同じだけで、全く何の関係もありません」

 何だか寂しい響きに聞こえるのは私だけ?

「申し遅れました。私片岡といいます。ところで今日は何の用で?」

 座りましょう。と右手を椅子の方に差し出しながら自らも椅子に座る。この辺のさり気ない行動と話のもって行き方は、流石新聞記者という感じがする。私の華麗な洞察力?でそんなことを思っている横で、倉橋君が昨日の朝刊から切り取ったと思われる記事を取り出し

「この記事は、片岡さんが書いたものですか?」

「そうですが、この記事が何か?」

当然自分の記事の確認は行っているのだろう、即答で答えた。

「野中弘美さんをご存じですか?」

 いきなり核心を突く質問をする。何だか刑事さんみたいで別の顔の倉橋君を見ているみたい。片岡さんは質問の意図を把握できなかったようだ。

「どうして彼女の名前を?」

何事かと言うような顔で言った。

「先日人恋坂で彼女に会いました」

「!」

 片岡さんの表情から息を飲むのが分かった。息を飲むってこういうことを言うんだ。

「彼女は十五年前に事故で亡くなったはず、人違いではないですか?」

「ほぼ間違いはないと思います」

 倉橋君は胸ポケットから一枚の写真を取りだして片岡さんに見せた。

「弘美!」

 片岡さんの反応から、間違いはなさそうだ。でもいつの間にそんな写真を手に入れたのだろう?

「確かに彼女はもう亡くなっています。でも霊となってまだこの世に残っていて、そして今彼女はこの倉橋志緒理という女の子に寄生しています」

 寄生って何だか嫌な響き。

「寄生?」

 怪訝な表情で片岡さんが言った。片岡さんも言葉の響きに嫌悪感を感じたようだ。

 「寄生という表現は適切ではないかもしれません。でも憑依という言葉も適切ではないと思います」

 倉橋君は一旦言葉を句切ると、私の方を見た。そして小さく息を吐くと再び片岡さんの方を向き、

「彼女は貴方に対する未練が断ちきれずに現世を彷徨っています。地縛霊となったため人恋坂から移動することが出来ません、たまたま波長のあった倉橋に寄生するようなかたちで貴方を捜そうと思ったのでしょう。でも倉橋を自分の意志で動かすことが出来ない。だから憑依というわけではないのです」

 あたかも信じられないという表情で倉橋君の顔を凝視していた片岡さんは、

「彼女は貴方に会いたがっています。うまく説明は出来ませんが僕は霊が視えるという少し変わった体質で、今も倉橋の中に彼女がいるのがわかるのです」

 その言葉に私は背筋が寒くなる。決して気持ちのよい言葉ではなかった。でも倉橋君が近くにいるだけで安堵感と安心感が私を包んでいる。

「彼女に会えるのですか?」

 肩を落として俯き加減に言った。やはり片岡さんもまた彼女の呪縛から解放されていないのだろう。私は片岡さんの表情を見てそう思った。

「私と彼女は当時婚約していました」

 小さな声で片岡さんが語り始めた。

「あの日も彼女は仕事帰りに私の所に来るはずでした。式を控えていたので準備の打ち合わせをする予定だったのです…。でも彼女はいつまで経っても来ない。心配になった私は彼女を迎えに行こうと、彼女がいつも通る道を対向から走っていると救急車とパトカーが見えたので、何となく嫌な予感がしてそこに向かいました」

 ここで一呼吸置き、

「そこで私は見たくないもの、見てはいけないものを目の当たりにして、一瞬頭の中が間違いであって欲しいという否定の言葉で埋め尽くされました。そう、彼女が…」

それ以上は言葉にならなかった。

「もういいですよ」

倉橋君と一回りは違うであろう年上の彼に優しく言った。年齢的立場が完全に逆転している。

「彼女に会いに行きましょう。そして今までの呪縛を解きましょう。彼女もきっとそれを望んでいるはずです」

 片岡さんに話しかける倉橋君の姿は、悟りを開いたお釈迦様のように神々しく私には映った。

 

 

 

 


最初から読む       「嗤う鬼火」16に続く



では後ほど!





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