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Author:西崎 彦
それなりの年齢になりながらも創作活動にいそしんでいる。個人事業主です。気になる点等ありましたらお気軽にご連絡下さい。
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自作小説やオリジナルイラストの個人的嗜好ブログ。 たまに啓発文章も書いています。
第五章 「これで解決ですか?」 1
その日の夜、圭介の部屋で圭介はベッドに腰を掛け、真理恵は机の椅子に座って、くつろぎながら今日起こった出来事を話していた。
今やっと落ち着いてゆっくりとしているがこれまでの経緯が大変だった。美穂を自宅に送り届けたものの、圭介達が帰ろうとすると、帰らないでほしい、泊まってもらえないかと、聞き分けのない子供のように懇願し手に負えない状態だったのだ。
あんな経験をした後で自宅に一人で夜を過ごすというのは決して心地の良いものではないだろう。まして早朝と午後、一日で二回も怖い目に合っているのだ、誰かと一緒に居たいと思うのは当然のことかもしれない。何とか美穂をなだめ今に至っている。
二人は今日の出来事を対峙して、なぜこんなことが起こっているのか? どうして美穂なのか? あの女性は本当に美由紀なのか? を分かっている限りの情報で検討していた。
「圭ちゃん、もしかして何か分かった?」
椅子に腰かけ机に頬杖をついていた真理恵が、考え込んでいた圭介の目が現実に帰ってきたのを見て今までの話を総括するように言った。
「大筋の謎は解けたと思う。後は明日……」
そこまで言った時“ガチャ”と部屋の扉が開いた。そこからラフな格好をした美穂が現れる。
「先にお風呂ありがとう」
濡れた髪をタオルで拭きながら、という何とも艶めかしい仕草で部屋に入ると、ベッドに座っている圭介の横に当然のように腰を掛けた。結局一人にするわけにもいかず圭介の家に連れてきたのだ。
しかし今度は真理恵の方が問題だった。高校生が異性の家に宿泊するのはおかしいと、猛烈に反対した。一部の人しか知らないとはいえ二人は婚約者だ、そんなことが許されていいはずがない。私の家に泊まればという真理恵の意見を美穂が受け入れず、結局真理恵も一緒に泊まるという条件で何とか事を収めた。
圭介は両親に事情を説明し。信用のある圭介に両親は真理恵も一緒だったらということで承諾してくれた。
それにしても美穂はラフな格好をしている。首元が大きく開いて少し前かがみになると胸の谷間がはっきりと見えるようなTシャツに短パン、どう見ても圭介を挑発しているような格好にしか見えない。今日の恐怖体験は本当だったのかと疑わざるを得ない。
それに何気なくサラッと圭介の横に座った事にも腹立たしさを感じた。当の圭介は何事もないような態度と表情で美穂に接している
「ところで私は今日どこで寝るの?」
美穂が艶めかしい表情で、圭介に身を寄り添わすように言った。
(近い、近い!)
真理恵は気が気ではない。
「隣の部屋が空いているから、今日はそこで早川君と長谷川君は休むといいよ。ベッドはないから布団を敷いて休んで」
表情一つ変えずに圭介が答えると、
「え―っ!私ベッドじゃないと眠れないの」
何とも我儘で、下心見え見えの態度に、真理恵の堪忍袋が張り裂けそうになるが、両手をぎゅっと握り締め何とか耐える。しかしどうしたらこんなに積極的になれるのだろう? 苛立ち半分、尊敬半分の不思議な感覚に囚われる。そんな真理恵の葛藤をよそに、
「この部屋は一人しか寝ることが出来ないから、一人でも大丈夫ならこのベッドを使っていいけど」
淡々と答える。
「それはそれで何だか怖いから、このベッドで一緒に…………」
それ以上は言わせまいと、次の言葉を遮るように、
「それは問題でしょ! まだ高校生だし、やっぱり節操は守らないと!」
真理恵の突然の横槍にびっくりしたように身を仰け反らせると、子供を見るような目で真理恵を凝視し、体裁を整えると、
「前にも言ったでしょ! まだじゃなくてもう高校生なの」
そう言いながら圭介の方に顔を向け、同意を求めるように、
「中山君はどう思う?」
「どうと言われても……。やはりその辺りは旧い常識かもしれないけど、一応一線は引いといた方がいいと思うから、君たちは隣の部屋で休んでよ。何かあったら直ぐに起こしてくれればいいから」
圭介からそう言われ美穂はしぶしぶ納得した。その前で真理恵は大きく安堵の息を吐いていた。
第五章 「これで解決ですか?」 1 完
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